サンドラ・ヘフェリン


「世界一ケチ」といわれるドイツ女性。でも日本女性よりずっと豊かに暮らしている。なぜ?


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ドイツ人は「ゴマすり」「おべっか」が大嫌い

 「サンドラ、そもそも義理はムダの垂れ流しではなかったんだよ。日本人が集団で暮らすうえでの必要な知恵だったのさ」

 ……と、日本の知人が、なぜ日本社会が義理を大切にしてきたかを教えてくれました。

「日本人は農耕民族で、その社会は集団で農耕に従事し、お互いに助け合いながら生活をしていたんだ。とくに災害は、みんなの協力なしでは立ち向かえなかったんだ。お祝い事があればみんなで祝う。不幸があれば、その家に食糧やおカネをあげて助ける。集団で暮らすには、日頃からそれぞれがみんなのことを知り、みんなに知ってもらう必要があった。だから、言語によらないコミュニケーションも大切にしたんだ。義理はそんな背景から日本社会に根づいたのだと思うよ。調べてみたら面白いかも」

 そういえば、日本人は集団になると、協調性をもって機能的に行動します。日本の小学校に転校して、集団行動にとまどったことを思い出しました。みんなと仲よくする、遠足、運動会、そして、朝礼といったなかば強制的な集団行動に、私は違和感を覚えました。

 ドイツだと、一年間同じクラスで過ごしても、名前だけしか知らないという子が何人もいます。それは不思議なことではありません。もちろん、朝礼もなければホームルームもありません。また、部活もないので、サッカーやテニスをやりたければ、市中にあるスポーツクラブに通います。運動会はそれらしきものはあるのですが、平日に三時間くらいやる程度のものです。競技種目は球を投げる競技、徒競走、走り高跳びくらいなものです。自分の競技が終わると成績に応じた表彰状をもらってすぐに帰ってしまいます。親は見にきません。

 学校は大学以外は全部午後一時に終わります。極端にいうと、学校は勉強して短い休み時間に仲のいい子と少し遊び、そして、家に帰ってしまうところにすぎません。

 知人の話に興味を持った私は早速調べてみました。そうしてわかったことは、子どもにとって窮屈であまりありがたくないように思えた、ひな祭り、七五三、成人式は子ども自身がが楽しむためのものでなく、子どもが幸せに成長して大人になっていくためのイニシエーション(加入儀礼)だということです。親や家族だけでなく属する集団のその願いをこめて行われてきたものだということです。結婚式も集団に属するためのイニシエーションで、我が家のお嫁さん(お婿さん)を多くの人に知ってもらうためのお披露目だということがわかりました。お祝い金を渡すのも、なにかと物入りだろうからという心配りの表われだったのですね。

 とはいえ、いまの義理は本来の意味を失い、形だけが独り歩きをしているように思えます。そして、お互いに負担をかけるものになっているのではないでしょうか。私には義理がやはり不可解に見えます。日本のお年寄りが「義理を欠いてもカゼひくな」というのを聞くことがあります。義理は心だけでなく、身体にも悪いものだ、なーんちゃって。

第1章_ドイツ人はごますり・おべっかが大嫌い.tiff ドイツ人が最も嫌がるものに「ゴマすり」「おべっか」があります。最近のドイツ語には「schleimen(シュライメン)」という動詞が頻繁に使われています。「ネバネバ、ドロドロした液体」「喉に詰まった痰」を意味する名詞の「schleim(シュライム)」を造語的に動詞化した言葉です。この意味合いから「schleim」は「ゴマすり」「お世辞」「おべっか」を指す言葉として使われています。

 「痰」という汚い表現を使うほどですから、ドイツ人が「ゴマすり」や「おべっか」をどれだけ嫌っているかがわかると思います。義理チョコは、ドイツ人から見ると「ゴマすり」や「おべっか」と同義語なのです。

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第1章_よい歩き方と悪い歩き方.tiffMT0006歩き方レッスン.pdfコラム6_走るためにご飯は最適!?.tiff

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