サンドラ・ヘフェリン


「世界一ケチ」といわれるドイツ女性。でも日本女性よりずっと豊かに暮らしている。なぜ?


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赤い口紅は売春婦を連想させる

 ドイツ女性は、自分の顔のよいところを引き立てるためか、自然らしさを強調するためにお化粧をします。決して顔をお化粧によってつくることが目的ではありません。これは「個人的であること」につながります。

 ドイツ女性にとって、アイライナーとまつ毛を黒くするものが必需品です。ドイツ女性は目がきれいなほうが魅力的と思っているので、目をよりくっきりとさせたがります。肌が白く金髪で目が青いと、顔がぼやけて見えてしまいます。そこでまず金色のまつ毛を黒くします。まつ毛はもともと長くクリクリと上に向いているので、色をつけるだけで充分。そして、目の下にアイラインを入れます。アイシャドウを入れる人もごく少数いますが、だいたいの人はアイラインだけで終わりです。ドイツ女性は、塗りすぎるほどに顔に何かをつけるのは嫌います。

 お化粧については稿を改めますが、ドイツ女性がパウダーと口紅を使う目的を簡単に述べておきます。

 パウダーは日焼けをしているように見せるために使います。茶色か黒っぽい色のものを使用し、パフではなくブラシでササッとつけます。ドイツでは日焼けした人が美人だとされています。健康的でインパクトがあるし、リッチなイメージがあると思っているからです。

 白い肌は、雨の多いドイツで一年中過ごす「つまらない連中」の証となってしまいます。肌の色が白いと「Stubenhocker(シュトゥベンホッカー)」だと思われます。「家・自宅」を表す「Stube(シュトゥベン)」という古いドイツ語と、「同じ場所に居座る」という意味の動詞「hocken(ホッケン)」との合成語です。つまり、シュトゥベンホッカーとは、ずっと家にいる退屈な人のことを指します。日本で言えば「オタク」といったところでしょうか。

 そんなわけで、肌が白い人は「ブラスね」と同情されることになります。青白いという意味です。ドイツ人は白色に「死体」「お化け」のイメージを持ちます。白い肌は気持ちが悪い、病的だと受けとめられてしまうのです。

 口紅はブラウンがドイツ人女性には人気があります。この傾向はあまり変わっていません。日本のように、年、季節が変わるたびに宣伝される、いわゆる流行色というものはありません。赤にはきつすぎる、自然でないというイメージがあり、売春婦を連想してしまいます。

 私は日本で暮らすうえで、義理とコンビニエンスストアには近づかないと決めましたが、お化粧も遠ざけておきたいもののひとつです。これらに限らず、あたりまえとなっている生活習慣の中には、ムダ使いを生むものが決して少なくありません。義理、コンビニ、お化粧はその象徴のように私には思えるのです。

  • 個人的であること(居心地がいいこと)
  • 環境を守ること
  • 実質性、自然らしさを大事にすること


 この3つが、ドイツ人が日常の中で、とても大切にしている考え方、生き方です。大量生産大量消費・廃棄の社会を否定するものでもあります。結婚式の話で紹介しましたが、実質性を求めると実利が伴うように、これらは必然的にムダ使いの防止となります。と同時に、もともとケチなドイツ人に、さらに節約の精神の醸成を促してきました。ですから、ドイツ人である私は、日本の消費文化が多くのムダ使いによって支えられているのではないか、と思ってしまうのです。

 私が知るかぎりでは、日本人の一般的な節約は、生活を助けるために、大きな楽しみを得るための我慢として、あるいは趣味としてされているように思えます。ドイツ人の節約は、かつては生活を助ける理由でされていましたが、いまは先に挙げた考え方、生き方に基づいた結果、それが得られていると思います。もちろん、節約で得たゆとりは大きな楽しみに使うことができます。でも、それだけの目的で節約がなされるわけではないことを、ぜひ心の中にとどめておいていただきたいのです。

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