質素倹約は生きるための条件 〜 節約とドイツの歴史
ドイツが位置するヨーロッパの中・北部は、もともと苛酷な自然環境の脅威にさらされていました。湿潤な気候は多くの雨をもたらし、冬になると雪を降らせます。この地に暮らす人々(ゲルマン民族)に、厳しい自然が与えた物資は乏しいものでした。そのうえ、男たちが絶えず四囲(しい)の敵と戦うという歴史を持っていました。そのため、衣食住はより貧しいものとならざるをえませんでした。
そうした中で、日々の生活は女たちの手にゆだねられました。子どもを生み育て、食糧の確保と保存、生活のために必要な道具と、衣食住の一切を創意工夫しなければなりません。
それどころか、戦う男たちのために武器までつくっていました。
こうした歴史の積み重ねで、ドイツ女性は他のヨーロッパ諸国の女性に比べて、生活に対する合理性、実用的センスを高めてきたといわれています。
- できるものは自分でつくる
- ムダを徹底して廃す
- 創意工夫をする
ドイツ女性は生きていくための必要条件としてこれらを追求してきた結果、「ドイツ人はケチだ」といわれるほどの質素倹約を暮らしの知恵としたのです。
ドイツ人は「居心地のよさ」を大事にしていますが、とくに女性はその思いが強く、快適な暮らしをなによりも優先しています。これは歴史的な知恵である質素倹約を抜きにしては考えられず、ドイツ人の日常には、質素倹約と居心地のよさの結びつきが多く見られます。最近とみにドイツ人が意識している環境問題も、快適な生活志向に欠かせない条件で、結果的に質素倹約の精神を醸成しています。