節約のために「教会税」を払わないカトリック
余談ですが、ドイツには「教会税」というものがあります。その「教会税」を払うのが嫌で最近、教会を脱会する人が後を絶ちません。
ドイツはキリスト教の国ですが、プロテスタントとカトリックに分かれています。南ドイツ、とくに私の出身地であるバイエルン地方は、カトリックが多くいます。実は、彼らは神様は信じていますが、ローマ教皇が大嫌いなのです。彼らは教皇への反発心を、次の言葉でいい表しています。
「ローマ教皇はおじいさんで、子どもを育てたことも、自分の家庭を持ったこともない。また、おカネにも不自由していない。そんな人が、子どもは神の贈り物だといって、避妊を認めない。現実の社会には、貧困な家庭や、また、育児ノイローゼの人がいる。ローマ教皇はいいかげんに目を覚ますべきだ」
ローマ教皇は、「避妊」に関して、ドイツ人の反感を買うという舌禍事件を起こしているのです。かつてアフリカ諸国を訪ねた教皇は、「コンドームは使うべきでない」と発言しました。エイズや子どもの餓死が世界的な関心事になっているにもかかわらずです。このとき、ドイツのある団体が、エイズ感染者、飢えている子どもを救うため、国家的な運動として、食糧、薬、おカネ、そして、コンドームを援助していました。ドイツの全メディアはこれを「問題発言」として、いっせいに取り上げました。ドイツ人の努力を無にするものだと。
また、中絶したい女性の意思を無視しつづけているという理由から、ローマ教皇はドイツ人女性に嫌われています。
ですから、ドイツ人は、
「こんな教皇と教会のために税金を払うのは、ムダ使いだ。節約したほうがましだ」
と怒っているのです。
ここまで書いてきて、私ははたと困ってしまいました。人間らしい生活と健康と地球環境を大事にした生き方が、ドイツの若い世代の間に節約の大切さを教えてくれていることは、私にもいえます。私も健康と環境については敏感だからです。でも、これだけでは歴史的に世界に名高いケチの国・ドイツの節約の神髄を語ったことになりません。日本のみなさんが舌を巻くような「ドイツ流・おばあちゃんの生活の知恵」がなければ、目的を達成したことにはなりません。未婚の私では役不足なのです。
そこで、私はミュンヘンに住む母をはじめとした一族郎党、日本在住の知人、ドイツの生活雑誌、その類の本を総動員して、知恵の収集にかかりました。約一年、私はそれに没頭したのです。そして、その結果、いやはや感心することばかりで、
「健康と環境を考えていれば節約ができるなんて甘い、甘い。日ごろから節約の知恵を働かせているから、人間らしい生活ができ、健康も環境も大切にできるんだ」
と、思い至ったのです。
それは、ドイツ人の私がビックリしてしまうほどの私の祖国の誇りです。では、次章からその数々を紹介しましょう。