見栄を張る「シキ・ミキ族」
さて、ここまでドイツの年中行事に沿って、ドイツ人がいかに質実倹約かを書きましたが、最近はそうでもないという人たちが増えています。この人たちは、プライドのために生活におカネをかけます。代表的なのが「シキ・ミキ族」(Schiki - Micki)と呼ばれている人たちです。シキ・ミキとは<プライドが(プライドがあって)、派手好きという意味です。シキ・ミキであるためには、以下の条件を満たさなければなりません。
- 流行を少し採り入れ、センスのよさを感じさせる服装。
- 髪から靴までそれこそピカピカ、キラキラ。
- 日焼けした顔。
- 「バハマでのバカンスから昨日、帰ってきたばかり」という台詞を吐く(バハマは、マジョルカ島、クレタ島でもいい。時期によって流行る島があるからだ)。
- Laura Biagotti(ラウラ・ビアゴッティ)の香水の香りがする。
- 月に一度、マッサージに行く。
- 服装チェックがあるVIPしか入れないディスコにBMWで行く。ミュンヘンなら『P-1』。
- 行きつけのレストランを持っている。ミュンヘンなら『Dallmayr(ダルマイヤー)』や『Kafer(ケーファ)』に限る。
- ヒルトンや『Hotel Bayerischer Hof(バイリシャホフ)』で開かれるパーティによく顔を出す。
- 住んでいるところはミュンヘンはじっこのGrunwald(グリューンワルド)。
- 冬のスキーはオーストリアのキッツビュエール(スイスのサン・モリッツでもよい。ただし、成り金 のイメージがある)。ここには別荘がなければならない。
- 大学では法学か経済学を専攻。心理学や哲学はダメ。
日常生活の中では、彼らは一般的なドイツ人と同じで、しまり屋です。電気代、電話代、水道代というものにはとても細かい。彼らは他人の目を気にして、見えるところにおカネをかけます。つまり、見栄を張るのです。住む場所、住む家、家具、車、そして、旅行におカネをかけます。「隣りが新車を買ったぞ」「うちはバカンスはイタリアだったけど、隣りはマジョルカ島に行ったなんて」と。私は一般的なドイツ人なので、こういう会話を聞くと気持ちが沈んでしまいます。
ドイツの人はミュンヘンがシキ・ミキの街である、といっています。私は、東京で知り合った北ドイツの人から出身地を尋ねられて「ミュンヘン」と答え、嫌な顔をされたことがあります。ナチュラル志向を好む一般的なドイツ人は当然、シキ・ミキが大嫌いなのです。