おカネをかけて生活を楽しまない
ドイツ人はおカネをかけて人生や生活を楽しもうとしない、と他のヨーロッパ諸国の人たちからいわれています。ケチでそうしているわけではなく、快適な生活(ゲミュートリッヒ)を求めた結果、ドイツ人は、おカネのかからないものを好むようになったのです。
とはいうものの、おカネをかけて楽しまないという指摘は当たっている面があります。ドイツの国民的行事や家庭の行事は、昔から本当におカネがかかっていません。
ドイツの2月にはファッシングという仮装のお祭りがあります。子ども大人も、アラブ人やインディアン、カウボーイに仮装してお酒を飲み、踊ったりして騒ぎます。冬の暗闇を忘れ、春を待つお祭りで、幼稚園児からおじいさん、おばあさんまで、みんな一緒になって楽しみます。このように年齢や性別に関係なく楽しめるのが、ドイツのお祭りや行事の特徴です。
仮装用の衣装は、日本円にして1万円もあれば立派なものが買えます。このようなパーティのチケット代は、3000〜4000円。ドイツでは、有料のパーティはどれもこれくらいの料金です。ディスコの入場料も安いものです。ただ、服装のセンス、その人の生き方が問われます。
誕生日も家族みんなで祝います。子どももおじいさんもおばあさんも、誕生日は全員で祝います。年齢のことを考えるのは嫌でも、誕生日のお祝いそのものは大歓迎なのです。
4月には、イエス・キリストの復活を祝う復活祭があります。このお祭りだけは、子どもが中心になります。復活祭が近づくと、ネコヤナギの穂を買います。タマゴの両端に小さな穴を開け、中身を全部出してしまいます。殻に特殊な絵の具やマジックペンで、思い思いに模様や絵を描き、それをネコヤナギの穂にぶら下げます。
子どもにとっていちばんの楽しみは、やはりプレゼント。復活祭の日曜日は「ウサギがプレゼントを隠してくれる」ということになっています。ウサギは居間のソファの後ろ、ベッドの下、カーテンの後ろ、庭の植え込みの中にプレゼントを隠します。
子どもたちは一生懸命になって探します。プレゼントはタマゴの形をしたチョコレートやお菓子、カラフルに彩られたゆでタマゴが入っている籠で、鳥の巣のようでとてもかわいいものです。また、その家の子どもが欲しがっているものが隠されている場合もあります。ともかく、子どもにはウサギが隠したということになっています。
このお祭りは、ネコヤナギの穂、タマゴ、チョコレートなどのお菓子、子どもへのプレゼントにおカネがかかるくらいです。
5月〜8月はビアガーデンの季節。自然の中にあるビアガーデンで午後から夜まで、小鳥の鳴き声を聞きながら、友人たちとビールを飲みおしゃべりを楽しみます。ビアガーデンは何時間もかけて楽しむところなので、「予定があるので」と中座する人は、冷たい視線に耐える覚悟が必要です。