ミュンヘンのビール祭り『オクトーバーフェスト』
ジョッキ半分で2時間も楽しむ、ドイツ人のケチ魂
ミュンヘンでは、9月中旬の土曜日から、10月の最初の日曜日まで、『オクトーバーフェスト』というビール祭りが開かれます。ミュンヘンっ子やバイエルン地方(ミュンヘンがある州)の人々にはなくてはならないお祭りです。
街のほぼ中心にある大広場にいくつものビールテントが立ち並びます。ドイツ国内の各ビールメーカーが出しているもので、収容人員3000名ほどの巨大テントです。
連日、どのテントも満員になり、まるでバケツのようなジョッキでビールを飲み、鶏の丸焼きを食べます。中央にはステージがあり、休むことなく音楽が演奏され、民謡などの歌が響き渡ります。このフェストは、ビアガーデンと違ってとても騒がしいものです。遅くない時間帯なら子どもたちも、バケツ大のジョッキでコーラを飲み、「め」の字型をしたパンを食べます。
オクトーバーフェストに行ったことのある日本の知人が、呆れてこういっていました。
「ドイツ人って、本当にケチなんだね。相席になったドイツ人たちとワイワイやったんだけど、彼らはステージの音楽や歌に合わせて、手拍子をとったり肩を組んで歌ったりしてうるさいったらありゃしない。しょっちゅう、全員が立ち上がって『プロースト!(乾杯!)』と、大きなジョッキを掲げて叫ぶんだ。ぼくも一緒になってやってたんだけど、2時間近くの間に、ジョッキを3杯も空けたんだ。ついつい飲んじゃって、お腹がダボンダボンと音がするくらい」
「ところがさ、彼らのジョッキを見たら、半分も空いていなく、ビールはとっくに気が抜けているんだぜ。ドイツ人だからガンガンいくのかと思っていたのにさ。そこで彼らに聞いたんだ。『あまり飲まないんだね』って。そしたら『飲んだり食べたりしているのは外国の観光客か田舎から来た連中さ。さもなければ家族連れだよ。ぼくらは飲みにきたのではなく、楽しみにきたのさ』だって。周りを注意してよく見たら、たしかにみんなのジョッキはなかなか空かず、つまみもテーブルにあまり並んでいないんだよ」
おっしゃるとおりです。
オクトーバーフェストで子どもが最も楽しみにしているのは、移動遊園地の乗り物です。バイエルンの人、いや一般のドイツ人にはアメリカを見下す傾向があるので、ディズニーランドが乗り物にミッキーマウスのキャラクターを使うようなことはしません。
多くの日本人は東京ディズニーランドに行くと、ディズニーグッズをお土産に買いますが、ドイツ人、とくにミュンヘンっ子はそんなことは決してしません。オクトーバーフェストに限らず、旅行先でお土産を買うのは、「ダサい」とされています。だいたいお土産を持っていては、自由に身動きできません。バッグも持たず手ぶらで(財布はGパンや上着のポケットの中に入れる)自由に歩き回るのが「粋(いき)」と、ミュンヘンっ子は思っています。
オクトーバーフェストにもお土産屋さんはたくさん出ていますが、買うのはアメリカ人、オーストラリア人、ニュージーランド人などの観光客ばかりです。オーストラリア人、ニュージーランド人は、オクトーバーフェストグッズが好きみたいで、バイエルン風の帽子やスカーフをよく買っています。