サンドラ・ヘフェリン


「世界一ケチ」といわれるドイツ女性。でも日本女性よりずっと豊かに暮らしている。なぜ?


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20年前では考えられない、クリスマスの海外旅行

 11月は、ドイツ人にとっていちばん嫌われる月です。すでに冬はやってきていて、空は暗く重く頭を圧し、毎日が色も形もない世界に変わるからです。11月には万聖節と万霊節というカトリックの祝日がありますが、寒空の下の行事なので、この日に風邪をひく人がいます。

 しかし、子どもたちは11月6日の『聖マルチンの日』をとても楽しみに待っています。この日の行事は、ロマンティックで心温まるものなので、子どもに「思いやりの心」を教えることができます。

 その前日、夜遅くなってから、幼稚園児がとくに多いのですが、大勢の子どもたちがローソクを点したランタンを持って、歌を歌いながら近所を回ります。その歌は、「真冬の寒いときに、聖マルチンが赤いコートを着て馬にまたがって街を巡る。途中、寒さに凍えている人(ホームレス)に出会う。聖マルチンが着ているコートの半分をその人に分け与える」という内容のものです。メロディがとてもかわいらしく、私はいまでもその歌を覚えています。

 ランタンは、子どもたちが何週間も前から幼稚園でつくります。ランタンを手にして、夜に外を歩くのがうれしくて、当日までずっとワクワクした気持ちで待ちます。ランタン代とローソク代で事足りる行事です。

第2章_クリスマスFrankfurt.jpg こうして12月になると、街はガラッと変わります。街中にクリスマスマーケットができ、どの家も窓に星形の飾りをつけ、街中がクリスマスの雰囲気になるからです。

 クリスマスまでの四週間はAdvent(アドベント/ラテン語で「待つ」という意味)と呼ばれ、日曜日ごとにテーブル上のリースにロウソクを一本ずつ灯していきます。こうしてイブには四本のロウソクが灯ります。だから、クリスマスのある12月は、ドイツ人にとっていちばん楽しい月なのです。

 とくに子どもたちにとっては12月は二度もプレゼントがもらえる月です。ドイツのクリスマスシーズンは、12月5日の聖ニコラウスの日の前夜祭から始まります。聖ニコラウス
はサンタクロースのことで、だからドイツでは12月5日に最初のプレゼントがもらえるのです。

 この聖ニコラウスは、ヨーロッパからアメリカに渡ってサンタクロースとなりました。そして、クリスマスイブにやってくるようになりました。それが第二次大戦後にヨーロッパに逆輸入されたので、子どもたちはイブの夜にもう一度プレゼントをもらえることになったのです。ただし、プレゼントをくれるのは、サンタクロースではありません。「クリスマスのおじさん(weihnachtsmann/ヴァイナハツマン)です。

 イブの夜は、その「クリスマスのおじさん」がプレゼントを持ってきて、クリスマスツリーの下に置いていく、ということになっています。子どもはイブの何日か前に、神様にあてて欲しい物を手紙に書きます。イブの夜になると、どちらかの親が子どもを連れ出し、教会に行ったり近くを散歩します。子どもが家に戻ると、ツリーの下にプレゼントが置いてあるというわけです。

 子どもはもらうだけですが、大人はプレゼントの交換をします。そのプレゼントももちろんツリーの下に置かれます。飼い犬もソーセージなどがもらえます。

 プレゼント交換が終わると、豚の丸焼きや白いソーセージなど、肉を中心とした食事になります。クッキーやクルミはありますが、いわゆるクリスマスケーキは、ドイツには存在しません。

 食事を終えてから深夜ミサに行く人もいます。ドイツのクリスマスはあくまでも家族の団欒を目的としていて、日本のお正月のようなものです。

 クリスマスもあまりおカネがかかりません。プレゼント代、クリスマスツリー代(本物のツリーは高い)、それにご馳走にかかるだけです。

 プレゼントは気に入らなかったり、服や装飾品だとサイズが合わなかったりした場合は、レシートがあれば、後でお店で、他の商品と取り替えることができます。最近では、プレゼントは「開けたときのお楽しみ」というものでなくなり、クリスマスイブの前に相手と買いに行き、当日に贈るというスタイルが浸透してきています。

 余談ですが、クリスマスの後に離婚するカップルが多いという調査結果を目にしたことがあります。義理や無理矢理が嫌いなドイツ人でも、クリスマスは家族団欒のイメージが強いので、夫婦が不仲になったとしても、クリスマスが終わるまで別れないのです。

 離婚に関していえば、ドイツ人は新しい生き方を求めることにためらいがありません。無理にやり直しをしようとは思わないのです。ドイツ人は一般的に保守的ですが、この点ではドライです。

 20世紀の終わり近くから、クリスマスイブに変化が起きています。家族と過ごすのが嫌な人たちはディスコ(そのために営業している)に行ったり、海外旅行に出かけます。20年前までは考えられなかったことです。

 一年の最後の行事は大晦日です。年が変わる午前零時になると、家族で家の前に出て花火を打ち上げます。そして、親しい人も加わりシャンパンを飲み、みんなで抱き合います。大晦日も花火代とシャンパン代くらいですんでしまいます。クリスマスイブがほのぼのとしたゲミュートリッヒなら、大晦日はワイルドといえます。

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