そこは定期券が使えるところかどうか
フランス人やイタリア人に次のような話をしてあげると、「やっぱり!」と喜びます。
ドイツの40代、50代の主婦は、夫がいないときにゴミや廃品を出します。ゴミ出しが夫の目に留ると、夫はゴミを細かくあらため、「なんでこれを捨てるんだ。まだ使えるよ。これもだ」と、必ず、あれこれ文句をつけます。これでは家の中の整理がつかないので、夫が不在のときにゴミ出しをするのです。もっとも、若い世代になると、夫の目などまったく気にしません。
日本で知り合ったドイツ女性・アンジー(45歳くらい)は、私と待ち合わせをするときは決まって、「定期券があるから○○にしよう」といいます。彼女の待ち合わせの場所選びの基準は、定期券が使えるところなのです。
アンジーは、務めていた会社を辞めた際、定期券の使用期限が切れるまでの1カ月間、毎日のように、定期券が使える新宿へ買い物や散歩に行っていました。タダなのだから利用しなくては損だ、といっていました。
お城のような豪邸に住む友人の家に遊びに行ったときのことです。私は電話をする用事があって、友人のお父さん(ドイツ人です)に携帯電話を貸してほしいと頼んだところ、彼は露骨に嫌な顔をしましたが、理由は携帯だと使用料が高いからだ、と私はいまでも思っています。ドイツ人は概して金持ちほどケチのような気がします。
私の父は昔、仕事でよくスイスに行っていました。水をよく飲むドイツ人はミネラルウォーターのまとめ買いをします。父もそうで、長期滞在のときは10本詰のケースをいくつも買って持っていきました。1ケース飲み切ると、父は車を運転して国境を越えてきます。10本の空ボトルをドイツの買った店に返しに来るのです。ボトル1本たった15円のためにです。ガソリン代を考えると、どうなんだろうと思うのですが、その行動は父の身体に染み込んでいるのです。
一般的なドイツ人はみんな、このようにムダを廃すことをあたりまえと思っています。そして、自然な人間らしい生活を求めると、必然的に生活上の節約につながると考えています。それに資源の面でも大きな貢献ができるから、節約は美徳だと考え、「ドイツは節約先進国だ」と誇らしげに思っている人たちがたくさんいます。